12
次の日、俺は保健室に行った。
もう昼休みが終わった時間で、屋上で昼寝をしていた俺は眠気が抜けず、ベッドの温もりを求めていた。
「穂積せんせ、ベッド貸して」
「あ?」
保健室のドアを開けてすぐさまお願いすると、デスクに座っていた穂積は眉間に皺をよせた。
生徒がいないとはいえ、保健室でくわえタバコはどうかと思う。
「なんだ、乾か……ま、いいぞ。お前には借りがあるしな」
穂積はにやりと笑った。
大体は怖いけど、こうやって悪ガキのように片棒を担いでくれるところは好きだ。
有り難くベッドを借りる前に、冷蔵庫からジュースを拝借。
「おま……図々しいにも程があるぞ」
「借り、返してもらってないし?」
「………」
ごくごくと遠慮なくジュースをもらい、ベッドにダイブした。
あ、カーテン締めよう、と身体を起こしたとき、穂積が近づいてくるのが見えた。
「お前、佐倉となんか喋ったか」
「は?」
「最近、あいつちょっと変で」
なにもないなら、いい、とカーテンを締めようとする。
「ちょっ、ちょいまち」
「あ?」
「先生って、その……知ってんの」
穂積はきょとんとしていたが、しばらくして、あぁ、と声を漏らした。
「身体売ってることか」
「……知ってんなら、なんで」
「止めたに決まってんだろ、でも、あいつは絶対にやめない」
頑固だからな、とぼやきながらベッドに腰かけてくる。
そういう問題ではないと思う。
「つーか、身体、あんなぶっ倒れるくらい悪いのに、」
「……乾、お前どうした?」
え?と思っていると、穂積はくっくっと笑った。
「学校一の問題児がそんな心配するなんてな……あいつに惚れたか?」
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