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「佐倉、ってさ……」



なに、というように訝しそうな佐倉の表情。



「どっか、身体悪いの?薬とか飲んでるみてーだし」
「………あなたには、関係ありません」
「売りもしてるよな?」



ばっ、と佐倉の顔があがった。
どうしてそれを、という驚きの次には、またあの時見たような冷徹な表情に変わってしまった。
どうしたらそんな表情ができるんだろうと、何故か心が痛んだ。



「弱味を握ったつもりですか?……いいですよ、ばらしてもらっても構いませんし」
「や、そういうつもりで言ってんじゃねーよ」
「もしかして僕を買ってくれるんですか?」



皮肉めいた笑顔だった。
挑発されているとわかっていて、頭に血がのぼるのを止めることができなかった。



「んなこと言ってんじゃねぇ、ぶっ倒れるくらい身体悪いくせに売りなんてしてんじゃねぇって言いてぇんだよ」
「っ……」
「それでもなんだよ、んな強がって売り続ける理由でもあるわけ?」



ぐっと口をつぐんだ佐倉だったけれど、しばらくしてぽつりと呟いた。



「……薬、買えないから」
「……は?」
「しないと、薬、買えない」



ぎゅ、っと布団を握りしめていた。
少しだけ、肩が震えているのがわかった。



「……そんな、身体悪ぃの」
「……薬がなかったら、多分生きてない」



目眩がするようだった。
予想以上の返答に、言葉がつまる。
普通に同じ教室で過ごす佐倉が、そんなことを抱えているなんて思っていなかった。



「……帰って」
「でも、」
「帰って!」



どん、と腕を突っぱねられた。
泣き出しそうなその顔に、俺は素直に席を立った。



「……気ぃつけて、帰れよ」
「………」
「なんかあったら、言ってくれていいし」



佐倉は俯いたまま、目を合わせようとしなかった。



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