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「……佐倉!?」



珍しく穂積先生が慌てた声を出したので、僕は顔を上げた。



「なに泣いて……どっか痛いか?」



言われてようやく気付いて、ひっく、と嗚咽が漏れた。
言葉を紡ぐのもままならず、ただぼろぼろと涙が出た。
左右に首を振って否定する。
あわあわと手を忙しなく動かす穂積先生が、滑稽だった。



自分で拒否していただけで、本当はずっと、愛されていた。



僕を好きだと言ってくれた乾も、僕を見守ってくれていた穂積先生も、ずっと僕を想っていた雪村さんも。

自分勝手にふるまって、僕に死ねばいいと言っていたあの女も。
ずっと送られてくる仕送りも、手紙も、無視し続けていた。
許して欲しいと乞うた言葉も、黙殺した。

僕は、愛されていた。



「佐倉ー……って、え……?」



ノックも省略するほどここに来なれた制服姿の乾は、泣きじゃくる僕と慌てる穂積先生の姿を見て、肩に下げたバッグをずり落とした。



「何、この状況?」



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