2
 

その日の夜、佐倉の病室を覗くと次は目を覚ましていた。
上半身を起こして、無言でその場にいた。



「……さ、くら」
「………」



繋がれた手首の鎖はそのままだった。
擦れて傷つくのだろう、手首には包帯が巻かれていた。

ぼんやりと、ただ佐倉は虚空を見つめていた。
死んでいるようなそれだった。

ひた、と思わず痩せた頬に手を触れた。
あまりの冷たさにぞっとした。
佐倉はやっぱり、反応を示さなかった。

あの時縋ってきた手も、今はもう、動かなかった。




「っ!」



ふら、と佐倉の身体が傾いだ。
咄嗟に手をつこうとしても、佐倉の手は鎖で繋がれていた。
慌てて手を伸ばすと、自分の腕の中にすっぽりと、佐倉は収まった。

拒否は、されなかった。
感情すら読みとれなかった。

一人にしないでと、伸ばされた手も、
嫌だと、理由もわからず拒否された声も、
もう、そこにはなかった。

たまらなくなって、佐倉を抱き締めた。
柔らかな匂いは、病院のそれに変わっていた。



「佐倉」
「………」
「佐倉」



返ってこない返事に期待して、ただずっと、名前を呼び続けた。



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