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病室に入って、息を飲んだ。

追いついてきた穂積が、俺の肩を掴んだ。
その力強さに現実味がはっきりした。



痩せた。

元々細かったけれど、ベッドに横たわって眠る佐倉は、もっと痩せていた。
真っ白な肌はまるで、死んでしまっているようだった。



「生きるのを、やめるんだ」
「え……?」
「佐倉の身体は、生きるのをやめようとしてる。……いや、拒否してる」
「拒否……?」



近付かなければわからないくらい、佐倉の息はか細かった。

細い腕には点滴が刺さっていた。
治りにくいのか、針の痕がいくつも腕に残っていた。
両手は、鎖でベッドの両脇に繋がれていた。




「食事をとっても、吐いちまう。夜は眠れなくてずっと起きてる。こうやって薬で強制的に眠らせるしかない」
「………」
「目を離したら……こうやって、手で首を引っかいちまう。最初は舌を噛もうとするもんだから、塞いでいたんだが、今はもう、その気力もないらしい」



首に貼られたガーゼと、残った蚯蚓腫れが痛々しかった。



「声をかけても反応しない。すべてを遮断してる」
「……なん、で」
「わからねぇ。ただ、佐倉は今までは、死んでもいいとは思っていても、意地で生きようとしてた。でも、今はそれがない」
「っ………」



思わず、佐倉に手を伸ばした。
ようやく自分の手が震えているのに気付いた。

久しぶりに触れた佐倉の頬は、驚くほど冷たかった。



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