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存在自体がすべての間違いだったのだと思う。
『あんたなんか産まなければよかった』
母親の言う通りだと思った。
僕は産まれるべきではなかった。
僕の存在はすべての人を不幸にする。
思い出すのは、あの日々。
当たり前のように授業を受けて、放課後遊んで、時々授業をさぼって。
そんな日々が、今は眩しかった。
それを甘んじて受け入れて、僕は気付けなかった。
僕がそうのうのうと生きていく資格はなかった。
自分勝手に身体を売った。
雪村さんの想いを弄んだ。
昼も夜も、僕の居場所はなかった。
どこにいても一緒だった。
然るべき報いを受けたと思う。
監禁されても、殺されても良かった。
雪村さんが満足するまで、一緒にいようと思った。
ぐずぐずに甘く痺れて、そのまま死にたかった。
もう、生きる事は、どうでも良くなった。
早く楽になりたかった。
思い出すのは、あの日々。
「佐倉」
そう、呼んでくれた。
好きだと言ってくれた。
初めて、行かないで欲しいと思った。
優しくしてくれた彼にさえ、僕は、向ける顔がない。
憎まれたって仕方がない。
消えていく感情の中で、一つだけ、『どうか嫌わないで』と思ってしまった。
その思いすら、もう、今は、消えるのを待っている。
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