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「佐倉、起こすぞ」
穂積が声と共に、佐倉の身体を起こした。
「っう……っは、ぅ、」
「……悪い、乾。そこから水持ってきてくれ」
言われるがままに、冷蔵庫の中からミネラルウォーターをとって、コップに注いで渡した。
「佐倉、薬飲め」
「っけほ……いや、だ……」
「嫌じゃない」
「っ、……や、」
「飲めっつってるだろーが!」
強い口調で穂積がいい放つと、びくっと身体を震わせ、佐倉はおずおずと薬を飲み始めた。
その数、十はあっただろうか。
すべて飲みきった頃には呼吸も大人しくなりはじめていて、佐倉は不貞腐れたようにベッドに横になって布団を被ってしまった。
「はぁ……」
穂積がしゃっ、とカーテンを閉めて、遮断する。
「ありがとうな。驚いたろ」
「や……」
「……なんだその荷物。さぼりか」
「………」
穂積は、くく、と笑ってデスクの上の書類をまとめ始めた。
「丁度いい。俺はこれから出張だから、佐倉のこと見ててくれ。下校時間になったら、教室から荷物取ってきてやれ」
「はぁっ!?なんで俺がっ」
「どうせ帰るつもりなんだろ」
薬のせいであと二時間は寝ると思う、とも付け加えられた。
とんだ災難が、降りかかった。
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