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side.秋良
起きる、という理央を抱き上げて、リビングまで連れていった。
ソファに下ろすと、ありがとう、と柔らかく笑ってくれた。
俺と同棲するようになってからか。
理央が笑えるようになったのは。
「飯、食う?」
「………ううん、僕はいいや」
俺は理央にホットココアだけ渡して、自分の朝食の準備に取りかかった。
「雨、止まないねー……」
理央は両手でカップを持って、膝を立てながらベランダを見ていた。
強くはないが、しかしはっきりと雨が降っていた。
「けほ、っ」
「……っ理央、」
「ごめ、大丈夫」
そう言うけれど、理央の咳はひどくなっていった。
「げほげほっ……けほ、っ」
「薬、飲もう」
寝室に置いている薬を、取りに行こうとしたその時だった。
「ひっ……!」
轟音と、理央の小さな悲鳴と。
カップが床に落ちて、パリンと割れた。
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