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side.秋良



「………」




しとしと、雨が降っていた。

目を覚ました俺が身体を起こすと、くんっと裾を引かれた。



「起きたのか」
「ん……」



頭を撫でてやると、そいつは少しだけ悲しそうな顔を緩めた。

俺の恋人、理央。
理央は、雨が苦手だ。



「もう行っちゃうの、」
「や、今日は仕事休み。……それより、昨日の夜眠れなかっただろ。まだ寝とけ」



隈が出来てしまっている。
そっと親指で撫でると、理央は長いまつげをふせた。



「ぼくも、ごめんね……起こしちゃって」



理央は、ガキのときから、ひどい喘息を持っていた。
幼馴染みだった俺が社会人になって働く一方、学校も休みがちだった理央は、言うなれば無職。

けれど、それでも、構わなかった。
理央の傍にいることが、ガキの頃からの俺の生き甲斐だった。

俺が養うからと同棲を提案したのは、自然な流れだった。
迷惑をかける、と目を反らす理央の小さな手を、無理矢理取った。

見ていられなかった。
ボロボロな姿を。
理央を助けだしたかった。



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