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「あれ、南どこいくの?」
背後からかけられた声に、びくりと自分の身体が震えるのがわかった。
教室を出ようとした瞬間のこと。
ぎこちなく、振り返る。
「っ、購買、に」
「俺らのも買ってきてよ。俺コーラね」
「いちごオレ!」
「ぶはっガキかよ!俺はファンター」
教室の後ろを陣取る、4人の集団。
僕はこの人たちが、とても苦手だった。
「佐原は?なににすんの」
一番後ろで腕を組んで、にやにや笑ってる人。
佐原くん。
「珈琲」
にや、っと笑う。
佐原くんは、この中で一番怖い人。
リーダー格ってやつで、いつも命令とかしてる。
「早く買ってこいよー!」
背中を叩かれた。
押される、というよりも、それは明らかな痛みを伴っていて。
「そ、んな、持てない、よ……」
「………南」
ひやりとした声は、佐原くんの。
「黙って行けよ」
そう、僕は。
この人たちに、虐められている。
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