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side.朝倉
葵は、ひどく怯えていた。
もっと早く、と思った。
迎えに行ってやれば、と思った。
気付いてやれば、と思った。
「ひ……っ」
怯えた目は、俺に向けられる。
わかっていた。
同じだってことも。
レイプまがいのことを、毎晩、葵にやっていることも。
あの男となんにも違っちゃいない。
自分の欲望だけを、ぶつけることしかできない。
男を殴った右手が、微かに痛んだ。
「………」
けれど、俺は。
たいせつ、に、して、やりたいと
「っ………」
葵が息を飲んだのがわかった。
小さな身体を、そっと、抱き締めた。
同じだ。
わかってる。
けれど、俺は。
その言葉の先を、紡ぐことは、できずにいた。
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