5
side.葵
朝倉さんは、僕を家へと連れて帰った。
ベッドにあげて、上から下までじっと見つめられた。
その視線が怖くて、ぎゅっと、服を握りしめた。
「………」
「…やっ……!」
上着を、とられた。
それだけじゃなく、服も全部。
僕を全裸にさせて、朝倉さんはゆっくりと、手を伸ばしてきた。
「や、あ、あっ……」
誰も、僕に、触らないで。
やってくると思った手は、止まった。
宙をかいて、けれどそっと、僕の頭に触れた。
咄嗟に身体を固くした僕を、朝倉さんはゆっくりと、
(え……?)
抱き締めた。
「……大丈夫か」
同じはずだった。
気持ちの伴わない行為。
ぼくが、傷つく行為。
あの男も、朝倉さんも。
けれど、この手は、違っていた。
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