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side.朝倉
ようやく電話が繋がったと思ったら、携帯がごつっと床に落ちたのがわかった。
一体何事かと耳をすませると、くぐもった声が聞こえた。
それと、暴れるな、という誰のものかわからぬ低い声。
嫌な予感がした。
この時間だと、大学から帰っていることになる。
家から大学までの道を、駆け抜けた。
明るい道なわけがない。
路地裏を通ったそこに、
「っう、うー……っ!」
暗闇に、蠢く影があった。
近づくと、コンクリートに見覚えのある携帯電話が転がっていた。
「………」
壁に押さえ込まれた、葵。
口にはタオルが、押し込まれていた。
恐怖に怯えるように、目をぎゅっと瞑っている。
後ろに確認したのは、見知らぬ男。
それからの記憶は、あまりない。
「あ、あ……」
気づいたら、家に未だ怯えた葵がいた。
俺の上着にくるまって、ちらりと見えた服は、無惨なものになっていた。
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