3
side.葵
たすけて、
誰かたすけて、
同じ行為のはずだった。
気持ちが伴っていないことも。
身体を弄ばれることも。
けれど、なにかが、ちがって。
「う、ふっぅ、う」
中途半端に脱がされた服。
身体に触れる手。
聞こえる息づかい。
抵抗は、無駄だった。
「ふぅ、ん、んっ……」
身を捩って、ぎゅっと目を瞑った。
頬をなにかが、伝った。
「なにしてんだ、」
息遣いに混じって、聞こえた声。
支えられていた手を離されて、その場に崩れ落ちた。
口が、自由になった。
低い声は、もう聞こえなかった。
鈍い、何かを打つ音。
小さく聞こえる悲鳴。
慌ただしい足音。
僕はただ、震えることしかできなかった。
自分の身体を必死に抱き締めて、目を瞑っていた。
「ひっ……」
突然、肩を掴まれた。
ばたばた暴れると、大きな布を被せられた。
上着、だった。
「じっとしてろ」
耳元で聞こえた声。
携帯を拾われて、僕は、抱えあげられた。
朝倉さんの、匂いがした。
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