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side.葵



後ろからついてきた足音に、僕は気づくことができずにいた。
少しだけ足を緩めた瞬間、ぐいっと腕をひかれた。
誰かに抱き込まれて、戸惑っている間には、光も届かないマンションの隙間に引きずり込まれた。



「なっ」
「静かにしろ」



ぞっとするような、ねっとりとした声だった。
うつ伏せに壁に押し付けられ、背中に見知らぬ相手の息を感じた。
なおも暴れようとする僕に、男はタオルのようなものを口に突っ込んできた。



「んぅっ、ん、んーっ」
「大人しくしてろ……キモチヨクしてやるから」



する、と前に手を伸ばされて、恐怖に萎えたモノを握られた。
びくっと身体が反応するのがわかった。

こわい、
こわい、
こわい。

身体中を滑る手が気持ち悪い。



「っう……」



ポケットが、震えた。
そっと、手を伸ばす。
気づかれないように。
指に、ボタンが、触れて、



「―――なにやってる」
「………!」



気づかれた。
驚いて、携帯を落としてしまった。

それを一瞥したのだろう、男は鼻で笑った。



「残念だったな」



手が、伸びる



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