1
 

side.葵



辺りはすっかり、暗くなっていた。

僕は荒く息をつきながら、走っていた。
大学の用事が、長引いてしまって。
早く帰らないと、朝倉さん、が、怒ってしまうから。

奴隷みたいな生活。
僕の意思は、どこにもない。



「……あぁ、もうっ」



信号につかまった。

気の短い朝倉さんを怒らせると、どうなるかわからない。
ほぼ毎日行われる行為が、もっと、ひどくなるかもしれない。

ただでさえ、ひどいのに。



(っ……)



信号を避けて、路地裏に入った。

街灯も少ない道。
あまり使いたくないのは、その暗さゆえに、犯罪も多いから。
僕も、その被害にあったことはある。



(どうせすぐだし……大丈夫、)



走っていればいいだろうと、その近道を使うことにした。

朝倉さんからだろう、ポケットの中で震え続ける携帯電話が、僕の背中を押した。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -