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「っか……はるか、」
「…………?」
身体が、ふわふわする。
視界がはっきりして、その先に、苦しそうに眉をよせる樹がいた。
抱き抱えられてることに気付いて、咄嗟に腕を突っ張って離れようとした。
「っつ……!」
「ばか、っ」
びり、と腕が痛んだ。
あぁそうか。
俺はまた、切ってしまったんだ。
樹はもう、嫌いになったかもしれない。
何度も何度も迷惑かけて。
何回も何回も傷付けて。
早く言ってよ、
俺なんて、いらないって、
「―――ごめん」
ぎゅ、と強く抱き締められた。
確かめるように何度も抱き返されて、俺は戸惑うばかりだった。
「あ、やまる、なんで……?」
「俺がお前を傷付けた」
「ちが、っ!」
反論しようとして、口を樹のそれで塞がれた。
頬を手で包まれて、角度を変えて長い長いキスをされた。
「あいつに……あんなこと言われて、カッとなって……俺があのときお前の手を引いて、気にするなって言うべきだったのに……一人にした」
「ちが、俺が、」
「ごめんな……俺、弱くて、ごめん」
樹は謝るばかりで、俺の発言を許さなかった。
「昔なにしてようが、どうだっていい。今俺の隣にいてくれれば、」
「きら、に」
声が、震えてしまった。
「きらい、に……なって、ない?」
答えを聞くのが怖くて、身体を離されるのが怖くて、俺は必死に樹にしがみついた。
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