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「っはぁ、はぁ、っ」
俺に行く先は、どこにもなかった。
俺の居場所は、ここしかなかった。
「っは、」
俺と樹の、家。
先に帰ったから当然だ、家のなかには誰もいなかった。
「………」
ぺたりと、フローリングに座り込んだ。
聞かれたく、なかった。
俺が売りをしていたのは、樹も知っている。
けれど、あんなところ、見られたくなかった。
「………」
樹の傷ついたような顔が、忘れられない。
(なんで、)
俺はあんなこと、してたんだろう。
先輩がきたとき、早く追い返してればよかった。
売りなんて、しなければ良かった。
樹を傷付けてしまうなら。
だったら、俺は、
生まれてこなければ、よかった――――?
「っ……や、」
心がざわついた。
(やだ、やだやだやだっ……)
伸ばしてはいけない。
泣いてはいけない。
傷つけてはいけない。
ペン立てにあった、ハサミが
鈍く、光を放つ。
(や、)
そこから先は、覚えてない。
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