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side.葵
「……なんで泣いてんだよ」
怪訝そうな顔。
ほらね、僕は、迷惑な存在。
「……っいて、ないっ」
「泣いてんだろーが」
「うっ……ひぅ、っ、」
言われたら、ぽろぽろ、涙が出た。
どうして涙が出るんだろう。
僕は、こんな感情、知らない。
「お前わけわかんね」
「っ……僕、だって、わか、な……っ」
「はぁ?」
「な、で……泣いてる、とか、苦しい……くて、悲しい、のが、っ」
どうして、胸が痛むんだろう。
「朝倉さんの、せいっ……」
「あ?俺?」
「あさくら、さ、がっ」
え?
(楽しそうに、喋ってたから、なんて)
「うー……っ」
「なんだよ、俺がなんだって」
「なんでもな、です、」
「お前な……」
とりあえず、泣き止め、と朝倉さんは白衣の袖で涙をぐしぐしと拭ってくれた。
知ってるよ、それは僕に対する優しさなんかじゃないって。
僕が泣き止まないと、困るんだよね。
朝倉さんの、体裁が。
「泣くのは夜だけにしとけよ。枯れるぞ」
「なっ……」
また、夜がくる。
僕だけのための、時間。
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