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side.葵
「っあ、」
父親が忘れた書類を、病院に届けにいった矢先のことだった。
廊下を歩いていると、白衣姿の朝倉さんが近づいていて。
はっと僕に気付いて、それから、にこりと笑った。
「どうしたの、葵く」
「あ、いたいた、朝倉さんっ」
朝倉さんが話し掛けようとしてきた瞬間、可愛らしい声が横から飛んできた。
朝倉さんの腕に、小柄なおんなのひとが抱き付いていた。
「野崎?なんでここに?」
「あれっ、知らないんですか?先週から横峯くん、入院してるんですよー。そのお見舞いです」
「え、ほんとう?」
……大学の後輩かなにかかな。
やけに親しそう。
朝倉さんが、少しだけ幼くみえる。
あんまりないもんな、同年代の人と喋ってるところみるの。
(………ていうか)
腕、いつまで、掴んでるの?
「あっ、ごめんなさい!もしかして、お話し中でした?」
僕の存在に気づいて、おんなのひとはぱっと朝倉さんの腕を離して、僕に頭を下げた。
今時な感じの、可愛らしい人だ。
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