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side.葵
僕は、知っている。
「………」
情事後の、ベッドの上。
意識を飛ばしていたらしい僕は、ふと目を覚ました。
最低限の後処理はできているようで、けれどシャワーを浴びるには、身体がだるかった。
のそり、と顔を動かすと、デスクに向かっている朝倉さんの姿があった。
「………」
まだ、仕事。
だったら僕を呼ばなければいいのにと思う。
抱かれて。
放っておかれて。
愛なんてもの、どこにもない。
暗闇の中。
パソコンに向かう朝倉さんの横顔が、ぼんやり浮かんでいた。
僕は、動かないまま。
「……(僕はね、)…」
知っているんだ。
朝倉さんの一番には、なれないってこと。
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