3
side.葵
「か、はっ……」
息が、できない。
朝倉さんが僕の首をしめる。
くっと親指で喉仏を押され、ひゅっと息が漏れた。
生理的な涙でいっぱいになって、視界が悪い。
それでも、
「(あさ、く、ら、さん)」
声はもう出ない。
口だけが、微かに動いた。
ねぇ、あなたはどんな顔してるの?
(僕はね、)
あなたに殺されたい。
殺されて、愛されたい。
だから、早く早く。
自然と、笑みが零れた。
「は、や……く……して、」
掠れた声。
届いただろうか。
もどかしくて、手を伸ばした。
震えたそれは、僕の上に跨がる朝倉さんの頬に触れて。
確かに、湿った感触を、覚えさせて、
(っえ、)
はっとした瞬間に、ぐっと力が強くなった。
残った酸素が、押し出される感覚。
意識が、遠退いていく。
(どうして、)
泣いてるの、
最後に聞こえた声は、
誰のものだったの、
「……好きだ」
暗転。
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