3
 

「学校の近くにね、美味しいプリンが売ってる洋菓子屋が出来たんだって」
「ぷりん、」
「好きでしょ?」
「……うん」



思わず、頬が綻んだ。
航がそんな僕の顔を見て、嬉しそうに笑った。



「今度買ってきてあげるね」
「行く、一緒……行き、たい」
「!……うん、すぐ近くらしいし、一緒行こ」



みんなは学校、行ってる時間なのに。
僕と航は一緒にお布団に入って、ぎゅーってしながら、ぼんやり話をしている。

幸せだなぁ、と思う。
なんでもない時間が、ごろごろ過ごしてる時間が、幸せ。



「そういえば満月先生、俺の部屋になんか持ってくるって言ってた」
「?」
「飲み物とかかなぁ。俺がいなかったらびっくりするかも」
「びっ……」
「もし先生がココ来たら、隠してね。俺絶対に怒られ、」



突然、寮部屋のチャイムが鳴って、誰かが入ってきた。
合鍵を持ってるのは航と、



「高梨来ていませんか?」
「なっ、あ、う、」
「……なんです、この山は。中に何を隠してるんです?」
「あ……ね、ねこ」
「ねこはこんなに大きくありません!」



がばっと先生が布団を捲って、踞ってる航が見えた。



「こら!大人しくしなさいって言ったでしょう!」
「うう……」



航の顔が面白くって笑ってしまったら、笑い事じゃありません!と満月先生に怒られてしまった。
心配してくれてるってわかるから、怖くはない。

こんな日も、悪くないなぁ、なんて。



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