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side.航
「………もう。だから言ったじゃないですか」
満月先生が体温計を片手に、はぁ、と溜め息をついた。
「心配なのはわかりますけどね!インフルエンザ感染者の側に四六時中いる馬鹿がどこにいますか!」
「だぁってー……」
そう。
数日前、奈津がインフルエンザにかかった。
もともと抵抗力?が弱いらしくて、すぐ風邪はひいていたけど。
俺は心配で、学校以外のときはずっと、奈津の傍にいた。
案の定、俺にもうつった。
「大人しくしててください」
「はぁーい」
「もう……ただでさえ、流行してて大変なんですからね」
満月先生は後で色々持っていきます、と言って寮部屋を出ていった。
たしか、隣のクラスは学級閉鎖寸前だったとか。
俺のクラスも駄目かなー皆川先生暇になるなーとか思っていた矢先。
「あ」
携帯が鳴った。
奈津からのメールだった。
どうだった、のひとこと。
元々満月先生に看てもらったのは、だるいなぁと言った俺の言葉を聞いた奈津が、呼んだからだった。
インフルエンザだったよ、と素直にそれだけ伝えると、きっと奈津は自分のせいだと思ってしまう。
……事実かもしれないけど、一緒にいたいって思ったのは、俺だから。
こっそり、廊下に出た。
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