2
side.葵
ぱんっ、と音がして目が覚めた。
「誰が勝手に寝ていいっつった?」
頬を叩かれたんだと遅れて気付いた。
頬がじんじんして、痛い。
「まだお仕置きが足りないみたいだなぁ?」
お仕置き。
朝倉さんの呼び出しに、遅刻してしまった罰。
僕は体調が悪くて、眠ってしまっていて。
そうしたら、遅刻してしまった。
ぱんっ。
反対側の頬が熱い。
「聞いてんのか」
「った、い、」
「痛いだろうな、痛めつけてんだから」
朝倉さんは、にやりと笑った。
医者のくせに。
簡単に、傷付けるんだ。
ばしっ、ばし。
何度も何度も、笑って殴られる。
視界が歪んで、朝倉さんの顔が見えなくなった。
痛みはもう、なかった。
「おい、聞いてんのかって、」
「っと、」
「あ?」
胸ぐらを掴まれて、腰が浮いた。
朝倉さんの顔が近い。
あぁ、やっと、見えたよ。
「もっと、」
僕を、めちゃくちゃにして。
「もっと、ください」
何も考えられなくなるくらい。
あなたに、刻み込ませて。
あなたの手で、終わらせて。
あなたの中に、いさせて。
「殺して、くだ、さい」
朝倉さんの顔が、くしゃりと、歪んだ。
浮いていた腰を、ベッドに打ち付けられた。
肩を押されて、ベッドに沈む。
息ができなくなるくらいの、それ。
「殺してやるよ」
ぐっ、と喉がつまった。
前へ top 次へ