5
side.千夏
ゆうじの顔が、めのまえにあって。
ぼくはそっと、それに触れてみた。
ほっぺた、まぶた、みみ、おでこ、かみのけ。
ゆうじは、くすぐったそうに笑った。
「ここ、に、いる」
確かにゆうじは、ここにいて。
ぼくのそばにいて。
未来にぜったいは、わからないけれど。
それでもゆうじはいてくれるのかもしれないと、少しだけ、信じられるような気がして。
「ちーな」
「っ」
くいっと引かれて、ゆうじの肩によりかかるみたいになった。
頭を大きな手で撫でられる。
ゆうじの匂いがして、ぼくは、ほっとするんだ。
「千夏も、俺の側にいてくれる?」
髪をすきながら、ゆうじが言った。
ぼくは何度も、何度も頷いた。
「いる、そば、ずっと……ゆじの、とこっ」
「うん」
「ゆうじ、ゆうじっ」
「うん、なぁに、千夏」
時が止まればいいな、なんて思ったのは。
初めてだった。
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