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side.千夏
それは、突然、やってくる。
ぞわりと、ぼくの身体をしはいする。
動けなくなって、なにも、考えられなくなる。
ただ、消えてしまいたくて。
しんじゃえしんじゃえって、誰かが頭のなかで言ってくる。
ざわざわ。
ざわざわ。
うるさい声が聞こえる。
「切り、た、い」
言うと、ゆうじはびくりとして、もっと強くぎゅうってしてくれた。
それでも、おさまらない。
ざわざわ。
ざわざわ。
どうしたらいいんだろう。
切ってしまったら、すこぅしだけ、落ち着くんだ。
いたいのも、あかいのも、ぼくをほっとさせてくれるんだ。
だから、もっと、切りたい。
けれど、ぼくは気づいた。
切ってしまうのは、おかしいこと。
ぼくは、おかしいことをいっている。
気持ちわるい腕がきらい。
弱いじぶんがきらい。
ゆうじも、ぼくが、きらい。
きらい、きらい、きらいきらいきらい。
―――『大嫌いだよ、千夏』
「や、やあぁぁっ、あっ」
ぼくを、置いていかないで。
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