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最近、千夏は調子が悪い。

外見的な怪我とは違って、内面的な傷は時が経てばすんなり治るなんて、そんな甘いものじゃない。
その場の気分によっても変わってくる。



「うーん……」



安定剤と眠剤を飲んで、穏やかに寝息を立てる千夏の額を撫でた。
首に貼られたガーゼが痛々しい。



「………ゆ、じ…」
「……起きた?」
「………」



目を擦りながら、こく、と小さく頷いた。



「あ、あの、」
「うん?」
「……なん、でも……な……」



なんだろう。



「なぁに?言っていいんだよ?」



威圧感がないように、にっこり笑って言うけれど、千夏はふるふると首を横にふるだけだった。

それからしばらく沈黙が続いた。



「………ちな、」



かりかりと、手首を引っ掻く癖。

千夏の細い腕には、たくさんの傷が残っている。
身体中の他人から与えられた傷じゃない、自分でつけた傷。
千夏がこの傷を増やすときは、不安的なときだ。

そっと触れて怯えないか確かめて、ぎゅうっと抱き締めた。



「不安になった?」
「っ………」



引っ掻き傷は、止まらない。



「切り、た、い」



かりかり、かりかり。
俺にはもう、止められないのかもしれない。



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