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「あ゛あぁぁぁ―――っ!」
「千夏っ」



さっきまで、眠っていたはずだった。
突然ばっと目を覚まして、泣き叫ぶ。

首を引っ掻こうとする手を押さえたとき、ばたばた暴れる千夏の腕が俺の頬に当たった。
びくっ、とそれに躊躇った様子を見せた隙に、横たえていた身体を起こして抱き締めた。



「あ、ああーっ、あ……っ」
「うん」



言葉なんて、なくてよかった。
震える身体だけで、十分だった。

年相応ではない小さな身体と、上手く作れない言葉と、眠ることさえままならないトラウマと。
どうしたら、救ってあげられるんだろう?



「もう大丈夫だからね、怖くない」
「あ、あ」
「そう、いいこ。ゆっくり息して」



未だ身体が固い千夏の身体を、何度も何度も擦った。
肩が微かに冷たいのは、泣きじゃくっているからだろう。
しばらくそうしていると、きゅっと控えめながら、千夏が俺の服にしがみついてきた。



「ゆ、じ」
「うん」
「こわ、も、やっ……こわい、っ」
「………うん」



怖い夢からも、救ってあげられない。

こうして抱き締めてあげるのは簡単だけれど、根本的な解決にはなりはしない。



「ゆうじ、ゆう、じ」



すがるように呟かれる声を、ただ、受け止めることしかできずにいた。



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