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side.和志
戸惑いか恐怖か、槙の身体が固いのがわかった。
今までこういうことをしたことはなかった。
大切にしたくて、槙が望むまでは、と思っていた。
でも、もう我慢できなかった。
俺のものにしたかった。
俺だけを見てほしかった。
「っや、ぁ………」
小さく、震えた声が聞こえた。
顔を少しだけあげて槙の表情を見ると、虚ろな目をして泣いていた。
その途端、
「あっ、やあっ、やあぁぁっ!」
「!」
ばた、と暴れだした。
おとなしかったのが一変、俺は油断していて拘束していた槙の手首を離してしまった。
その隙に、転がるようにベッドから降りた槙は、部屋の隅で踞った。
俺から距離をとるように。
明らかに怯えたその表情は、涙でぐしゃぐしゃになっていて。
震える身体を庇うようにしていた。
「や、やっ、ごめん、なさっ」
「まき、」
「ひっ……!」
近付くと、びくりと怯えた。
頭を抱えてしまって、しまった、とようやく冷静になった。
怖がらせてどうする。
泣かせて、どうすんだ。
そっと近づいて抱き込むと、やはりばたばた暴れた。
「っひ、う、っ……」
「ごめんな、槙、ごめん」
「こわ、やっ、離して……っ、」
小さな身体が震えて痛々しい。
嫌がるにしては、度が過ぎているような気がした。
仮にも、まだ服を脱がしたりもしていないのに。
異常なほどの、怯え。
「やだっ、やだやだやだぁっ」
「落ち着けって、」
「も、やっ……僕は、嫌だった……っずっと」
なにか、引っ掛かる。
嫌『だった』?
『ずっと』?
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