4
 

side.和志



戸惑いか恐怖か、槙の身体が固いのがわかった。
今までこういうことをしたことはなかった。
大切にしたくて、槙が望むまでは、と思っていた。

でも、もう我慢できなかった。
俺のものにしたかった。
俺だけを見てほしかった。



「っや、ぁ………」



小さく、震えた声が聞こえた。

顔を少しだけあげて槙の表情を見ると、虚ろな目をして泣いていた。
その途端、



「あっ、やあっ、やあぁぁっ!」
「!」



ばた、と暴れだした。
おとなしかったのが一変、俺は油断していて拘束していた槙の手首を離してしまった。

その隙に、転がるようにベッドから降りた槙は、部屋の隅で踞った。
俺から距離をとるように。
明らかに怯えたその表情は、涙でぐしゃぐしゃになっていて。
震える身体を庇うようにしていた。



「や、やっ、ごめん、なさっ」
「まき、」
「ひっ……!」



近付くと、びくりと怯えた。
頭を抱えてしまって、しまった、とようやく冷静になった。
怖がらせてどうする。
泣かせて、どうすんだ。

そっと近づいて抱き込むと、やはりばたばた暴れた。



「っひ、う、っ……」
「ごめんな、槙、ごめん」
「こわ、やっ、離して……っ、」



小さな身体が震えて痛々しい。

嫌がるにしては、度が過ぎているような気がした。
仮にも、まだ服を脱がしたりもしていないのに。
異常なほどの、怯え。



「やだっ、やだやだやだぁっ」
「落ち着けって、」
「も、やっ……僕は、嫌だった……っずっと」



なにか、引っ掛かる。

嫌『だった』?
『ずっと』?



前へ top 次へ

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -