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side.槙



「か、ずし、くん……?」



無言のまま手を引かれて、やってきたのは和志くんの家。
お家には誰もいないのかしんとしていて、靴を脱いだらまた手を引かれた。
何度か来たことがある部屋につれていかれて、今。



「なに、和志くん、」



ベッドに、押し倒された。

手首は和志くんに押さえつけられてて、身動きが取れない。
明かりが逆光になって、和志くんがどんな顔してるのか、僕からは見えなかった。



「なんか、喋ってよっ……」



さっきから黙ってばっかで、不安になる。
僕がたまらずそう言うと、すっと顔が近付いた。



「むかつく」



やっと見えた和志くんの顔は、ひどく、冷えていて。

その目は、あの時見たものに、似ていた。



「ひっ………!」



首元に顔を埋められて、脇腹を冷たい手が這った。

思考が固まって、身体が動かなくなる。
頭のなかは、あの時の光景。
和志くんが重なっていく。



誰もいない家。
冷たい目。
誰にも愛されない、僕。

逃げ出せない。
義兄の強い力。
覆い被さる、陰。



「あっ、やあっ、やあぁぁっ!」



嫌だった。

触らないで。
誰にも言えないで。
ただ口を閉じた。



僕の、忘れていた過去。
箱が開くように、再生された。



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