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side.和志
槙。
俺の、恋人。
所謂、天然。
「………あの馬鹿」
放課後、いつもの待ち合わせ場所に向かったときだった。
槙の、くすくすと楽しげに笑う声が聞こえた。
ちらりと下駄箱から覗くと、たしか槙と同じクラスのおとこと、話をしていた。
槙は、知らないんだ。
自分がどれだけ魅力的な容姿をしているのか。
どれだけ庇護欲を掻き立てる雰囲気を持っているか。
槙が告白してきて二つ返事したとき、槙はまさか承諾されると思っていなかったのか、驚いた顔をしていた。
俺が見ていたことも、知らないんだ。
「………おい」
「あ、和志くん!」
ぱっと、飼い主が表れた犬のような、屈託のない笑顔。
その笑顔さえも、今は、素直に受け取れない。
「帰るぞ」
「わわっ……あ、じゃあ、また明日ねっ!」
明日ね、とか言わなくていいんだよ。
相手を威嚇する意味で睨んで、槙の手をひいた。
痛いよー、とへらへらしながら笑っていた槙も、次第に俺の様子に気づいたのか黙っていった。
むしゃくしゃする。
俺だけ見てろよ、と。
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