3
 

side.主人



「なっ……!」



部屋は二階だった。
下には植え込みがある。

死ぬはずはない、と思いながらも、慌てて窓下を見下ろした。
白い身体が、花に紛れていた。

どこか痛めたのか、ぎこちなく身体を動かして、千夏は逃げた。
広い庭をよろめきながら駆けていく。



ああ、痛めつけたのは、俺だ。



「千夏っ!」



咄嗟に窓から飛び降りた。
足を挫くことなく着地して、小さな背中を追う。

俺の声に気付いて、千夏が振り返った。
ひ、と小さな悲鳴が聴こえて、さらに逃げようとして、

がくんっ、と身体が傾いだ。



「ばっ……!」



伸ばした手は、届いた。
抱き止めた千夏は、震えていた。



「っ……ごめ、なさい……ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいっ……」



頭を抱えて、ぎゅっと小さくなって。
言葉が出ずに、上着を肩にかけた。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -