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side.主人
執事である弥生は、今日外の用事に出ていた。
千夏の後処理をするのは弥生の仕事だが、俺がやるしかない。
他の執事には任せたくなかった。
それは何故だか、わからないけれど。
後処理をしなければ、千夏が辛いことはわかる。
辛くなったところで俺には関係ないが、それで体調でも崩されると困る。
「……お、」
おい、と声をかけながらドアを開けた。
名前なんて、呼んだことはなかった。
ベッドに千夏はいなかった。
白いシーツに少しだけ、血がついていた。
シーツのシワの先、そこには窓があって、
「千夏!」
青い空。
投げ出された上半身。
細い足が、するりと窓枠を抜ける。
駆け寄った先。
伸ばした俺の手を、すり抜けて。
青い空に、白い身体が、溶けた。
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