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side.千夏
「っう……!」
痛みだけの、行為が終わる。
ぎしりとベッドのスプリングが鳴って、ご主人様が退いたのがわかった。
俯せのまま、シーツをぎゅっと握りしめる。
つ、とこめかみに涙が流れた。
「………」
無言のまま、ご主人様が部屋を出ていく。
ぱたん、とドアが閉まって、静寂。
きっとこのあと、執事がやってくる。
僕を、綺麗にするために。
でも、僕は知っている。
綺麗になっても、また、汚れる。
繰り返し、繰り返し。
窓が見えた。
青い空が、ひどく遠かった。
眩しくて、眩しくて。
溶けて消えてしまいたいと思った。
「っ、」
身体を動かすと、ぎしぎし痛む。
溶けたらきっと、痛みも感じなくなる。
青い空に、手を伸ばした。
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