3
「………」
言い過ぎたか、とシャワーを浴びながら思う。
けれど我が儘を言っていいことと、悪いことがある。
それは、わからなくちゃいけない。
なにより、千夏の体調が気になる。
明日の朝にでもゆっくり話しよう、と頭を冷やした。
「………わっ!」
脱衣場を出たところ。
濡れた髪をシャワーで拭きながらリビングに行こうとすると、すぐそこに千夏がいた。
冷たいフローリングに、膝を立てて座っていて。
膝に顔を埋めて、表情は見えない。
「ちな……?」
「っ、ゆじ、」
しゃがんで肩に触れると、ぱっと顔があがった。
目にいっぱい涙を浮かべた千夏は、戸惑う俺にぎゅっと抱き付いてきた。
「ち、」
「ごめ、なさい……」
小さな声。
ふぅ、と小さくため息をついて、俺も抱き締め返した。
そのまま抱き上げて、ソファに座る。
「何がごめんなさい?」
「わ、がまま、ゆった……」
「ん、我が儘は言っていいんだけどね、ちゃんとしなきゃいけないとは、ちゃんとしなきゃ駄目。わかる?」
諭すように聞くと、こくこく、と頷いた。
「わがまま、ゆっていいのと、だめなの、ある」
「そ。お薬は飲まなきゃ駄目でしょ?」
「……ごめん、なさい……」
「ううん、いいよ。俺も怒ってごめんね」
頭を撫でると、きゅう、と腕の力が強くなった。
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