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ホットミルク、ホットココア……甘いカフェオレにしようか、とキッチンで考えていると、
「やー……」
「?」
小さな声が背後から聞こえた。
振り向くと、千夏がぴょこ、と壁から顔を出していて。
火や刃物などがあるキッチンには、千夏は近付けない。
主人を待つ仔犬のように、じっとこちらを見つめている。
泣きそうな、寂しそうな顔は、今にもくぅんと鳴き出しそうで。
「ちな」
カフェオレを作って千夏のもとによると、ぱっと顔が明るくなった。
きゅ、と裾を掴まれる。
「戻ろっか」
「………ん、」
抱き上げられないから、裾を掴まれたまま歩く。
ぱたぱた、と千夏が着いてくる。
ソファに座ると、またよじのぼって、俺の膝に乗ってくる。
ぎゅう、と首に腕を回される。
「んぅ」
はぐ、と首を噛まれる。
甘噛みにも似たそれ。
可愛いなぁ、と頭を撫でる。
「……大丈夫だからね」
「……?」
そんなに不安にならなくたって。
自分を守ろうとしなくたって。
俺がそばにいるから。
(だってこんなに、愛しい)
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