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side.藍二



「ごめん、ごめんな、藍二、俺はどこにもいかねぇから……」



高城さんがぎゅうぎゅう抱き締めてくれて。
少し痛いそれは、なんだか懐かしくて。
香水の匂いと、わずかな煙草の匂い。

安心、する。



「あいじ、」



僕の名前を呼んでくれる人なんて、もういないと思ってた。



「泣くな……」



僕を抱き締めてくれる人なんて、もういないと思ってた。

初めて、だ。
僕は、愛されたんだ。



「た、たか、しろさ、」
「ん、?」
「なまえ……なまえ、教えて」



あなたの、名前。



「悠生」
「ゆー、せい、」
「藍二」
「っ、ゆーせい、ゆぅ、せーっ」



僕に暴力なんてふらなかった。
罵倒も浴びせなかった。

いつも笑っていて。
僕の名前を呼んでくれて。
抱き締めてくれて。

不器用なのに、一生懸命に。
僕を、愛してくれた。



「ゆうせー、すき、っ……」
「っ……!」
「すき、だいすき、っ」
「……ん」



僕に愛を教えてくれたひと。



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