7
side.藍二
「ごめん、ごめんな、藍二、俺はどこにもいかねぇから……」
高城さんがぎゅうぎゅう抱き締めてくれて。
少し痛いそれは、なんだか懐かしくて。
香水の匂いと、わずかな煙草の匂い。
安心、する。
「あいじ、」
僕の名前を呼んでくれる人なんて、もういないと思ってた。
「泣くな……」
僕を抱き締めてくれる人なんて、もういないと思ってた。
初めて、だ。
僕は、愛されたんだ。
「た、たか、しろさ、」
「ん、?」
「なまえ……なまえ、教えて」
あなたの、名前。
「悠生」
「ゆー、せい、」
「藍二」
「っ、ゆーせい、ゆぅ、せーっ」
僕に暴力なんてふらなかった。
罵倒も浴びせなかった。
いつも笑っていて。
僕の名前を呼んでくれて。
抱き締めてくれて。
不器用なのに、一生懸命に。
僕を、愛してくれた。
「ゆうせー、すき、っ……」
「っ……!」
「すき、だいすき、っ」
「……ん」
僕に愛を教えてくれたひと。
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