3
side.恭平
俺のシャツを握りしめて。
残り香を必死に辿って。
胸が苦しくなった。
「満月、わかる、俺」
「ゃ……」
「ごめんな、一人にして。俺、恭平。わかる?」
目を合わせるように、満月の頬を持ち上げる。
少しずつ、満月の目がはっきりしてくる。
「……きょ、へ」
「ん」
「きょうへ、きょ、へい」
今しがた握りしめていたシャツと一緒に、俺に腕を回してきた。
背中を撫でて、耳元に口をよせる。
「怖かったか、」
「っ、こわ、夢、見た」
「ん」
「隣、いない、しっ……」
「ごめんな、買い物行ってた。起こせば良かったな」
さっきとはうってかわって、必死に、すがるように、シャツに手を回す。
指が痛いんじゃないかってくらい、強く、強く。
そんなにしなくても、俺はどこにもいかないよ、と。
伝えるために、俺も同じくらいに抱き締める。
「いな、くなった、って、」
「言ったろ、ずっと一緒いるって」
「嘘、じゃない、?」
怖がった、小さな声。
嘘なんかじゃないよ、と何度も呟いた。
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