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「ごめんな、雨宮ぁ……」
「ううん、僕も前にいろいろしてもらったし」
お隣の部屋の、榊くん。
最近寒くなってきたからかな、風邪をひいてしまったみたい。
ここの寮は、もはや一人暮し同然。
頼れるのは自分しかいない。
前に僕が体調悪かったとき、榊くんがお見舞いにきてくれた。
だから、今度は僕。
助け合いって、大事だと思う。
一人は心細いし。
「でも、良かったね土日で」
「うん、月曜までに治せば、授業遅れないしなー」
会話の間、ぴぴぴ、と体温計が鳴った。
「どう?」
「……38.5」
「えっ……!あ、起き上がっちゃだめ!寝とかなきゃ、こんな高いっ」
「怠いだけで全然元気なんだけどなー……」
榊くんはふふ、と笑う。
柔らかい雰囲気の、すっごく優しい人。
リーダー格とかじゃないのに、回りに自然と人が集まってくるような人なんだ。
「看病は嬉しいけど、ほら、もう夜だし」
「あ………」
時計を見たら、もう20時だった。
どうしよう、と答えあぐねている僕の背中を押すように、平気だから、と言ってくれた。
「なんかあったらメールか電話かしてね、絶対っ」
「ふふ、大丈夫だって」
後ろ髪を引かれる思いで立ち上がると、そっと手を握られた。
「っ……?」
「ごめ、もうちょい、このまま……」
弱々しい声だった。
いつもの榊くんと違うみたい。
風邪のときって、心細くなる。
僕もそうだから。
「……あま、みや?」
「一緒にいるよ」
「………ありがと……」
早く良くなればいいなぁ。
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