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side.葵
その日から、朝倉さんは僕を呼び出しても、そんなに行為に及ばなくなった。
軽いそれをして、すぐに終わったり。
そうやって、日が過ぎていった。
バレたくなかった。
朝倉さんの誕生日プレゼントを買うために、バイトを始めただなんて。
大学に行って、研究室の補助のバイトをして。
夜は朝倉さんのところに行って。
そんな毎日の繰り返し。
気疲れか体力がないからか、ご飯を抜いて寝こけてしまうことは少なくない。
「………」
朝倉さんの家の前。
はぁ、と自然と溜め息が出た。
疲れていない、といえば嘘になる。
それでも僕に、拒否権はない。
「……入れ」
チャイムを鳴らして、ドアを開けられる。
奥に戻ってしまう朝倉さんの背中を見て、おじゃまします……と靴を脱いだとき、
「っ……!」
視界がぐらりと歪んだ。
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