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side.葵



「うーん……うー……うーん……」



小さく唸りながら、お洒落な雑貨屋をうろちょろする。
ぎゅっと握った拳に固い指輪の感触を思い出して、また小さく、溜め息をついた。



もうすぐ、朝倉さんの誕生日だ。

僕の誕生日のとき、指輪をもらった。
「悪い虫が寄らないように」という嫌味を含ませたもの。
本当に朝倉さんは僕のことが嫌いなんだろうなと思う。

けれど、もらったものはもらったもの。
指輪に刻まれたブランドの文字に、そう安いものではないことはわかる。
なんでこんな高いもの……と思ったけれど、朝倉さんのことだ、むしろ安いものの方が馴染みがないんだろう。

だから僕も、なにかしらお返しをしなければと思っているのだけど。



「たっか……」



悩みに悩んで、無難に時計かな、と考える。
僕の時計は大学の入学祝いでもらったものだから、自分で時計を買ったことがなくて。

安いものはいくらでもあるけど、そんなの買えない。
けれど高いものも、買えない。
バイトもしてないし、買えるものは限られてくる。



(………よし、)



朝倉さんに似合いそうな、革のベルトがついた時計。
値段を確認して、お店を出た。



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