5
side.朝倉
葵の身体を綺麗にして、服を着せた。
微熱を知らせた体温計を置いて、ばたばたと準備をする。
「ふ、ぅ……」
額に冷えぴたを貼ってやると、少しだけ表情が和らいだ。
最近、大学の方が忙しそうだった。
無理を、していたのかもしれない。
気づかなかった。
いや、気づくつもりもなかった。
「……ごめん、な………」
そんな状態の葵を、無理矢理抱いた。
何度も頭を撫でて、顔色を伺う。
「……あ、さくら、さ……?」
「……気がついたか」
ぱっと手を離す。
身体を起こそうとするので、肩をつかんでベッドに沈めさせる。
「熱がある。少し休め」
「か、かえり、ます」
「そんな状態でか」
「めいわく、かけられません、」
熱のせいか、少し舌っ足らずな声。
抱き締めたい衝動を抑えて、そっと、額を撫でた。
「……?」
「………悪かった」
「え……?」
「無理、させた」
きょとん、としている葵を怯えさせないように、少しだけ、抱き締めた。
ふわりと、葵の匂いがした。
「……せめて、看病くらいさせろ」
やっぱり、苦しそうな姿は、見たくないから。
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