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side.葵
「………」
一言しか書かれていないメールに、僕は溜め息をついた。
朝倉さんからの、いつもの呼び出し。
気が進まないのは毎回だけれど、今日はさらにだ。
(……きつ……)
今朝から熱っぽい。
微熱程度か、風邪気味か。
最近、実験続きだったから、疲れがたまっているのかもしれない。
その趣旨をメールで伝えても、いいから来い、の一点張り。
ちっとも信じてない。
(……大丈夫だ、)
行って、朝倉さんの気がすんだら、すぐに帰ればいい。
それくらい我慢できる。
僕に、拒否権は、ない。
「………きたか」
朝倉さんの家に着いた。
ドアが閉まると同時に、壁に腕を縫い付けられる。
口のなかを蹂躙されて、性急なそれに、すぐに息があがる。
「あさく、ら、さん」
僕の声を無視して、ベッドに身体を投げられる。
苛ついてる空気を、感じ取った。
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