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side.和志
俺と槙が付き合いはじめて、もうすぐ半年になる。
それなりに恋人らしいことはしているが、ぶっちゃけた話、キス止まりだ。
「和志くん、あったかい」
ぎゅう、と腕に抱きついてくる。
この可愛くて、小さくて――――おそろしく天然な槙に、俺は手を出せずにいる。
ヘタレで不器用だと、友達に言われた。
一度、耐えられなくて槙を組み敷いたことがある。
そのとき槙は、泣いてしまった。
昔色々あって、トラウマになっていたことを思い出させて、怖がらせた。
俺はそれから、槙にあまり触れないようになった。
自制する自信がなかったし、大切にしたかったから。
それでも、槙は泣いた。
嫌いになったのかと勘違いされた。
大切にしたい。
抱きたい。
怖がらせたくない。
俺のものにしたい。
そんな思いが渦巻いて、どうしていいかわからなくなる。
「っよ、」
モヤモヤとそんなに近づかないでくれやばい、などと思っていたら、槙が身体を反転させてこちらを向いた。
膝に跨がって、向き合っている状態。
どく、と心臓が鳴った。
「んー」
きゅ、と抱きついてくる。
槙は、俺が嫌いなわけじゃない、大切にしたいと思って距離を置いた、と話をしたときから、甘えてくるようになった。
無意識にあった警戒心がとれたのだと思う。
――義兄に襲われたことがある槙は、無意識に、そういうことを避けていた。
認められたと嬉しくなった。
同時に、自分もヘタレとはいえれっきとした高校生男子だ、我慢できるか自信がなかった。
槙の純粋な信頼を、裏切ることなんてできなかった。
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