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side.和志
「和志くん、手、おっきいねぇ」
俺の恋人。
槙。
可愛い可愛い、恋人。
「ほら、こんな違う」
ぴったり、手を合わせてくる。
俺のより全然小さな手は、細くて、今にも折れてしまいそう。
大切な、大切な、恋人。
「……ね、和志くん」
「ん」
「こっち、座ってい?」
今の状況。
俺の家。
現在、両親は旅行中で不在。
槙と二人きり。
初めての、お泊まり。
「………え」
俺は槙の提案に固まってしまう。
槙が指差したのは、ソファに座ってる俺の、足の間だった。
一緒にDVDを見終わった後、なんとなくぼんやりと過ごしていたときだった。
俺は思考がうまく働かず(ついでにいつもの無口さが顔を出して)、返事ができずにいた。
「……えいっ」
槙は、俺が無口なことを知ってる。
俺の返事を待たずに、隣から足の間に移動する。
へへ、と声を漏らして笑いながら、背中を俺に預けてきた。
俺の手は槙によって、槙のお腹に回されていて。
手をにぎにぎと、触られる。
「……いやだった?」
「………んなわけないだろ」
顔をあげてうかがってくるから、そのまま額にキスをした。
槙は、嬉しそうに笑った。
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