7
side.葵
「ん……」
目を覚ますと、夕方になっていた。
背中、あったかい。
「……!」
後ろから、朝倉さんに抱き締められていた。
まだ眠っているのか、髪に吐息がかかってくすぐったい。
「あ………」
違和感に指を動かすと、指輪の存在を思い出した。
左手の、薬指。
「……え……?」
びっくりした。
僕を後ろから抱き締める朝倉さんの手が、僕のお腹くらいにあって。
左手に、指輪が、あって。
「………」
そっと触れると、突然に手が動いて、大きな手に握られた。
「……まだ寝とけ」
「お、起き、てっ……」
けれど、次の瞬間には朝倉さんは眠ってしまっていた。
背中と、手が、あったかい。
まぁいいか、と僕は目を瞑った。
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