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side.葵
「朝倉さっ……お願い、あけて……っ」
朝倉さんの家に戻って、ドアを叩いた。
ゆっくり開いて、ぐい、と腕を引かれて部屋に入れられる。
「……近所迷惑だろーが」
朝倉さんはスタスタと部屋の中に入っていってしまう。
僕は慌ててそれを追いかけた。
「あ、あの、これっ……!」
リビングに行くと、朝倉さんはソファに座っていた。
震える手でポケットから―――指輪を、取り出した。
「わ、忘れてて、昨日っ……こんな、っ」
「普通忘れるか、自分の誕生日」
「ごめんなさい……」
「俺がどんな思いでなぁ、」
「こんな、高いのっ……もらえな、っ!」
朝倉さんに返そうとすると、そのまま腕を取られてソファに組み敷かれた。
手のなかの指輪を取られて、左手を上げられる。
薬指に、ぴったりはまる。
「……男避け」
人の玩具取られちゃたまらねぇからな、とにやりと笑われた。
「っ………」
そのまま耳にキスされる。
吐息がかかったまま、
「……おめでとう」
空耳かと思うくらいの、小さな声だった。
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