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side.葵
「あら、お帰り」
家に帰ると、母親が迎え入れてくれた。
大学に泊まり込むことは何度かあったから、さほど驚いてはいないのだろう。
「疲れてない?シャワーどうする?」
「ごめ……後にする……」
「そう……あ、そういえば、朝倉さんから荷物預かったわよ」
その単語にびくっとなった。
「に、荷物?」
「うん……昨夜取りに来なかったからって、わざわざ持ってきてくださったわよ」
朝倉さん、いつも礼儀正しいわねぇ、と言いながらお母さんは行ってしまった。
荷物?
そんなこと聞いてない。
……嫌がらせ?
慌てて部屋に行くと、机の上に小さな箱が置かれていた。
「……?」
菓子折りが入ってそうなくらいの箱。
綺麗にラッピングされている。
ぴりぴりとそれを破ると、
「え……?」
箱の半分には、僕でも名前を聞いたことがあるような、洋菓子屋さんのマカロン。
その半分には、
「な、に、」
片手で持てるくらいの、小さな箱。
恐る恐るあけて、綺麗に輝くそれを、手に取った。
指にぴったりはまる、それは、
「あ……」
昨日、誕生日だ。
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