5
落ち着いてきた千夏を持ち上げて、向かい合う形にした。
千夏はぽろぽろと涙を流したまま、口をひらいた。
「ゆ、じ、っ……」
ぎゅう、と抱きつかれた。
シャツを掴む小さな手は震えていて、背中を撫でてやる。
「こわかったね、ごめんね、」
後ろの感覚に、思い出してしまったのか。
昔の、生活を。
しがみついてるのをいいことに、下のパジャマを履かせてやった。
終わった瞬間にぎゅうぎゅうくっついてくるので、あんまり可愛いから、笑ってしまった。
「こわ、かった、よっ……」
「もう終わったからね、すこし、眠ろうか」
「………や…」
「大丈夫、ここにいる」
ね、と千夏を寝かせて、その隣に寝そべる。
にこ、と笑ってやると、おずおず近寄ってきた。
そこを抱き寄せる。
「一緒、いるから。おやすみ」
「……おやすみ、なさい……」
体力的に疲れてしまったのだろう、すぅ、とすぐに眠ってしまった千夏の頬に残る涙を、そっと拭った。
早く、元気な姿をみせて。
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